《第428話》『戦って、戦って戦って戦って、』
「――っ、」
「――っ!」
夜貴を抱えたまま、跳び上がり回避行動を取る。何本かの触手が、妾の立っていた地面を抉った。
それだけにはとどまらず、その背後にいた狐にまで攻撃を仕掛けた模様。しかし、流石にドジと言えど、アレに当たるほど馬鹿ではないようだ。
「謳葉! 活葉!」
「――っ!」
「っ、おとーさん――」
妾は空間の穴を抜けさせ、夜貴を双子へと預ける。できることなら傍に居てやりたいが、この憐れで愚かな魂を何とかしなくては、救えるものも救えない。
「そんなモノ気にせずとも、今更用は無いぞ?」
道摩はまだ放っていなかった触手を空に向かって伸ばす。その先端が、空間の穴へと飲まれゆく。
直後、妾と狐を、空間の穴が取り囲んだ。
「避けろ、駄狐!」
「貴様に言われぬでも!」
全方向から貫きにかかってくるそれを、妾は全身から鬼火を放つことで焼き払う。狐は狐で、コマのように高速回転。一瞬のうちに破砕する。
「「はぁああああああああああああああああああああああああああっっ!!」」
攻撃点を抜けた妾達は、両側から挟み込むようにして道摩へと攻撃を仕掛けた。鬼火を纏った腕と、狐火を纏った剣が、妾の姿をした異形の地点で交差する延長線を描く。
「流石、素早いな」
「む――!」
道摩がその場で一回転すると、空間の穴と地面に埋没していた触手が引き抜かれ、無数の鞭のようにこちらへと向かってくる。
「狂鬼姫!」
狐はその身を三体に分身し、剣を盾にして触手の鞭を防いだ。勢いの止まったそれのギリギリ寸前でさらに助走をつけ、宙に浮く道摩へと狙いをつける。
「打ち砕けよ――ッ!」
妾の放った拳が、道摩の張った結界に衝突する――。




