《第424話》『大切なヒトへの想い』
『……――ッ! …………、…………』
「僕にも、大切なヒトがいる。自分の命より大事だって、即座に断言できるほどに。そのヒトはとっても強くて、僕の心配なんてあっという間に杞憂にしてしまうような力を持ってる。けれど、時々そうはならなくて、すごく苦しい思いをしてしまうことだってあるんだ」
僕の、正直な気持ち。まっすぐな、気持ち。
その想いが強すぎて、時には道を踏み外してしまうことだってあるだろう。
強い想いが、混沌を引き起こすこともあるだろう。
『…………』
「馬鹿だってやるし、冗談みたいなことだってやらかしてしまう。巻き込まれて、ウンザリしてしまうようなことだって」
『…………』
「だけど、ね。やっぱり、僕は呉葉が好きだから」
『…………』
「好きだから隣に居続けたい。大好きだから助けたい。とてつもなく大好きだから――その心意気を、存在を、魂を全力で肯定するんだ」
『――――…………』
けれども、想いはその相手あってのモノ。それが分かっていれば、否定することがどんなに愚かしいことか、理解できるはずである。
『…………』
いつの間にか、身を焼くような熱さと芯まで凍てつく冷たさはやわらぎ、気が付けばどこかぬくもりのようなモノが、辺りに漂っている気がした。
名もなき九尾の狐が、呆れたようにクスリと笑った。そんな気がした。




