表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第十三章
421/1022

《第420話》『他には何もない空間』

「――っ、ここは……?」


 はっと、僕は目を覚ました。――いや、我ながらその表現はおかしいとは思いながらも、他に例えようのないその感覚に困惑する。

 僕は、この直前まで呉葉を抱きしめていたはずだった。直後、背中に思い鉄の塊を叩きつけられたかのような苦痛を感じ、一瞬にして目の前が真っ暗闇に包まれたのだ。


「…………」


 そして今僕は、この空間にいる。真っ暗な、どこまでも真っ暗な、果てなき深淵の続く空間。街の明かりも星の光もない夜空とは、きっとこのような光景なのだろう。

 そんな中に、自分の姿がはっきり浮かんでいる。あるいは、何もないというのはこのようなことを言うのだろうか?


 もしかすると、死とはこのような――、


「――っ!」


 ぶるるっと、全身に寒気が走った。あまり、自分の生き死にを推測するのは気分がいいものではない。

 今の考えを霧散させるつもりで、前へと足を進める。と言うか、進んでいるのかすら分からない。踏みしめている感触が、まるでないのだから。


「呉葉――」


 今自分がどうしてここに居るのか。その理由は見当がつかない。だが、そんなことよりも、呉葉の方が心配だ。

 僕が死んじゃったら、呉葉は悲しむかな――それとも、無謀すぎる行動に怒るだろうか。どちらにせよ、心労をかけてしまうことは間違いないだろう。

 何にせよ、呉葉といつものように平和な時間を過ごしたい。叶う願いか、はたまた叶わぬ願いか。僕は歩きながらどうすべきかを――、


「――うん?」


 しばらく行くと、急に何かの気配が強くなった。

 それは、業々と燃え盛る炎のごとく熱いような。それでいて永久凍土の中のような冷たさのような。

 身を刺す憎悪。怨恨。それを今、確かに僕は感じていた。そして――、


 その先に、赤黒く燃える一抱えほどもある炎の球を見つけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ