《第418話》『僕の、大切な――』
「それを言うならば、そこな邪気に操られし鬼神の方が厄介であろ――っと、と、危ない危ない」
尻尾は、道摩だろうが鳴狐だろうが謳葉だろうが活葉だろうが、そして僕だろうが、見境なく襲い掛かってくる。ついには、お得意の空間跳躍まで活用して
道摩もそうだが、今の呉葉もまた、周囲に危険を及ぼさないとも限らない。あらゆる意味で、このまま放っておくわけにはいかないのだ。
けど、いったいどうすれば彼女を止められる。何の力もない僕に、出来ることは――、
「樹那佐 夜貴ッ! 何をぼさっとしておるのじゃ!」
「――っ!」
呪われし呉葉の尻尾の一本を受け止めながら、鳴狐は僕を怒鳴り付けた。
「貴様ごときに何が出来るかなどしらぬが、迷っているヒマなどないじゃろうが! 貴様は狂気鬼の夫なのじゃろう!?」
「っ、鳴狐――!」
空間を割り裂いて、鳴狐の背後から尻尾の一本が襲い掛かる。一つを剣で止める彼女に逃れる術はない。
――が、鳴狐は九つの尻尾でその一つを受け止め難を逃れる。
「まず早く、あやつを何とかしてほしい――! あのまま、では……っ」
――彼女の、言う通りだった。こうして迷って、立ち往生している間にも、呉葉は苦しんでいるのだ。
呉葉のことだ。多少の覚悟の上で、殺生石を使ったのだろう。一人で解決できるという過信。僕らの心配を聞きながら、それでもボクを含めた大切なヒト達を守るためにその道を選んだ、僕の愛する鬼神。
助け合いは、夫婦の基本だ。




