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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第十三章
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《第416話》『怨みと憎悪の化身』

「そんな――そんなために、呉葉を、こんな目に……っ」

「我が必要だと考えた故に、そうしたまでだ。そもそも、呉葉とて安倍晴明には強い憎悪を抱いてしかるべきなのだぞ?」

「――っ!」

「それが故に、我の復讐に手を貸すことは道理ではないだろうか? むしろ、我の力の礎になれたことは、本望と言っていい」


 道摩に悪びれる様子は微塵たりとなかった。むしろ、感謝を要求する態度でモノを言っている。


「その上、こうして届け物までしてくれた。かの大妖怪、白面金毛九尾の狐の、その強力な妖気の一部。酷く邪気を帯びているために、安易に手を出すのは厳しいが――」


 道摩の周囲を、その言葉を遮るように黄金の槍が取り囲む。


「こう言ったしぶといモノを、なんと言うのだったか? ふぅむ」

「呉葉――ッ!?」


 結界が、九つの尻尾の進撃を止めた。だが、暴力そのモノを体現するように叩きつけられたそれが、ギシギシと障壁を歪ませる。


「そうだ、思いだしたぞ。ゾンビだ」


 防護壁が決壊するのと同時に、確かに道摩の姿がかき消えた。何もない虚空を、尻尾が抉り破壊する。


「っ、狂気鬼――! いや、母上なのか、え……?」

「鳴狐!」

「っ!」


 猛り狂う尻尾が、鳴狐に襲い掛かろうとする。その寸前、彼女は剣の側面で黄金の槍を受け止めるが――、


「か、は――っ!」


 勢い止め切れず、そのまま吹き飛ばされる。


「おとーさん!」

「ッ!」


 僕の身体能力では避けられなかったであろうそれを、活葉まで抱えた謳葉が引き倒す形で助けてくれる。その際に頭を地面に強打してしまったが――死ぬよりずっとマシだ。


 だが、そんな僕の身のことよりも――、


「呉葉――」


 もはや、見る影もなく――それこそ、まさしく「生ける屍」のように痛々しいその姿は、見るに堪えなかった。


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