《第414話》『道摩の、復讐へのプラン』
安倍晴明――今ではすっかり世間でも有名な名前になってしまったが、元々は、特に歴史の表舞台に出てくるほど目立つ人物ではなかったという。
優秀であることには変わりないが、歴史の教科書でお勉強する人物と言うのは、昔であれば昔であるほど統治者が主たるもの。
ここまで名が知れたのは、陰陽師と言うオカルト的な「未知」と言う大衆の興味と、それを最大限に映像表現できる映画と言う媒体のためだろう。
「復讐、って――」
「ククッ、そう、復讐だ。憎くて憎くて、たまらなくてたまらなくて。その心だけで、我はこの長い時を過ごしてきた」
一方僕ら、どちらかと言えば社会の裏側の裏側に位置する平和維持継続室の人員は、「安倍晴明」に関する資料が組織内のネットワークに存在するため、知っている者は多い。
その力は、科学技術などで補強されている者もいる現代の術師すらも上回ると推測されるようで、最重要注意とまでされている。
「我が平和維持継続室の最上位に位置しているのもそのため。ヤツを滅ぼすための準備を、平行世界、未来とリンクしながら着々と練っていたのだ。そして、そのための力をようやく手に入れることができた」
「それ、は、どういうこと、なの――?」
「っ、活葉、無事――っ、その怪我!?」
謳葉に肩を貸されて、活葉が僕の後ろから出てくる。その背後には、歪な形の空間の穴。その背中は血で真っ赤に染まり、力の制御がしきれていないのだと推察される。
「ほう、呉葉の子供たちか。遠くから見ていたのは知っていたが――隠れていなくてよかったのか?」
「よくも、おかーさんを――ッ!」
謳葉は、呉葉によく似た憤怒の表情で道摩を睨み付ける。いつもの彼女ならすぐ飛びだしていくが、今は活葉を支えているためか、視線だけに終始する。
「どう、と言うと――ふむ、そうだな。汝ら双子の未来では、邪気の影が呉葉やその夫を殺害し、そして世界全体へとその影響力を伸ばそうとしているはずだ」
「ええ、その通り、よ。それを、道摩――あなたは、イヴにタイムマシンを作らせ、その未来の情報と共に、私達をこの時代へと送った。……まさ、か」
「その通りよ。全ては、枝分かれしたいくつもの未来より仕組んだ、我、ひいては『無限の道摩』の計画の一部だったのだ」




