《第四十話》『友との邂逅』
「何とか撒いた――かな?」
僕はその辺に駐車してある車のミラーで背後を確認しながら、ほっと息をつく。
ただ山道を通ったくらいでは撒くことは出来ないと思っていたが、何やらあったのか、呉葉は追ってこない。――なんだか、いかにも痛そうな声が聞こえたが、大丈夫だろうか?
心配なので、戻って確認したかった。だが、これも呉葉のためであると思い直し、僕はそのまま進む。次の仕事についてくる気満々だった呉葉に、後をつけさせるわけにはいかない。
「あ――おーい! こっち、こっちよ!」
僕はその声に呼びかけられ振り向いた。歩いているうちに、どうやら目的地の公園の前へとたどり着いていたみたいだ。
「やあ、久しぶりだね藍妃! ――なにそれ?」
「ん? ツチノコ。そこで拾ったわ」
「み、道で拾うモノじゃないよ――!?」
ショートカットヘアーで、フリンジとスエードスカートという流行スタイル(たぶん彼女の姿がそうなのだから、きっとそうなのだろう)のその少女。顔は愛らしい猫を思わせるが、同い年である僕から見ても生意気さが漂っている。
同じ訓練施設にて、同時期に訓練していた彼女は、静波多 藍妃という。今では彼女も立派に勤めを果たしているらしいが、しばらく会っていなかったため、今日は久しぶりに顔を見た。
「それより、遅いわよ! どれだけ経ったと思ってんのよ?」
「え――? まだ時間には5分くらい……」
「10分前集合! 世間の常識でしょうが! 相変わらずのほほんとしてるわね!」
うん、特に藍妃の方は変わりないらしい。昔はその口うるささが苦手だったが、こうして聞くとすごく懐かしい。そんなに経ってるわけじゃないんだけどね。
「――久しぶりの再会なんだから、もっと早く来てくれてもいいのに……」
「うん? どしたの?」
「何でもないわよ! それで、今日あんたを呼んだのは他でもないんだけど――」
そうして、藍妃は早速僕を呼んだ理由を話し始めた。考えてみれば、他の事務所のヒトと仕事をするのは初めてだ。
だけど、訓練所では結構一緒に訓練してたんだ。きっと、うまくいくに違いない。




