《第402話》『降誕する鬼』
「な、に――?」
吹き飛ぶ地面。その下は、案の定よくわからない機械の塊だった。
拳を振り下ろし、弾けるスパークと共にモーターが、配管が、基盤が、歯車が。全てバラバラに散る。そこまでは、充分妾の思っていた通り。
――しかし、
道摩の脳ミソが入った機械は、宙に浮いていた。
だが、驚愕の理由はそれではない。これで何もかも吹き飛んで終わると考えていたのは事実だが、対策を取られていちいち驚いていては、ド素人もいいところ。
ただ、その機械の下にあった、もう一つの水槽。その中に入っていたモノを見てしまった妾は、流石にそれを隠しきれなかった。
「なぜ、そこに妾がいるのだ――!?」
妾。狂鬼姫。白き髪に、真っ白な肌、そして今は閉じているその瞳は、恐らく紅色をしているだろう。
膝を抱えて眠るその姿は、まさにこの妾、「樹那佐 呉葉」そのモノではないか。
――いよいよもって、不気味さは上限を突破した。
「答えろ! 貴様はなんだ!? 一体何がしたい!? 何のつもりだ!? それはなんだ!? 答えろ、答えろと言っている!」
『…………』
ちょっとやそっとではへこみをこしらえることしかしなかった床が、崩落してゆく。壁に飛び移った妾は、装置へと向けて炎弾を放った。
水槽の中の、「もう一人の妾」の目が、かっ、と見開いた。




