《第400話》『最低限の任務は果たす機械』
娘たちを振り返った時。僕は我が目を疑った。
「ぐ、ぎ、ぐぐ、ぐ――っ、くきききききききっ!」
三面あったサンジン・ショコウの顔、その一つだけが宙に浮き、金属の歯で謳葉と活葉の襟を咥えていたからだ。
二人は、未だ機能し続けるマシンに、宙づりにされている。
「アレでなお死なぬとは――化け物かえ!?」
「君が言うの――?」
「ききっ、タタカいにはマけちゃったけど、このコタチはツれカエらせてモラうわよォ? きひひひひひっ」
「っ、逃がすと思っているのかえ――! ……っ!?」
「鳴狐――!?」
藤原 鳴狐が突然、がくりと膝をついた。
「く、毒が――」
「毒――!?」
「なぁんだかシらないけど、ワタシタチユウセイねぇ? まあ、ニげられるサンダンはサイショからついてたけど」
鳴狐は体を痙攣させて動けなくなっていた。顔色も悪く、尻尾も力なく地面に広がっている。
「それじゃあ、バァイ♪ キナサさん?」
「っ、待――ぷわっ!?」
金属の頭部の左右から、勢いよくスモークが焚かれた。それはあまりに一瞬に、周囲の景色を覆い隠す。
そうして、煙が晴れた時。そこに謳葉や活葉、サンジン・ショコウの頭もいなくなっていた。




