《第397話》『一尾』
「あひゃひゃっ! ほざきなよ!」
遠隔機動兵器10基が本体から拡散し、逃げ場をなくすように鳴狐を取り囲んだ。そこから、一気にガスが噴き出してくる。
先ほどから、鳴狐もこれに苦労させられていた。彼女はそのたびに尾から突風を巻き起こし払い飛ばしていたが、その隙をつくように金属の化け物は狙ってくるのだ。
「芸が、ないのう――ッ!」
「っ、無茶な!?」
だが、あろうことか鳴狐は、そのガスを無視するかのごとく、剣を突き出してサンジン・ショコウへと突っ込んだ。
「オロか、ねぇ!」
「ぐ、ぎ――っ」
真正面から飛びこんで来た鳴狐を、サンジン・ショコウはその豪腕で叩き伏せた。直撃。砕け散る地面。
「――ッ!!」
「アハハハハハハッ! 今度こそ、オシマイね!」
「貴様の弱点、教えてやろうかのう?」
「何――ッッ!!? が……ッッ!!」
サンジン・ショコウの背後に、藤原 鳴狐が出現。金属の背中に、深々と剣を突き立てる。
――彼女の姿が、何か違う……?
「貴様は逐一慢心し、こちらをいちいち煽りよる。優勢に立った途端、調子にのる癖があるのかえ? 隙ができるぞ?」
「っ、ワタシに、そんなモノあるはずが――!」
自律機動兵器が本体の元へと戻ってくる。鋭い切っ先で、大妖狐を狙わんと。
そしてそれは、生身の身体を至る箇所から貫いて――、
「確かに、並大抵のヤツでは入り込めぬ、針の穴も同然の隙じゃ。この10本の刃の感覚のように」
サンジン・ショコウの背後で、鳴狐が霧散する。本隊に突き刺さる自律機動兵器。いつの間にそこにいたのか、金属の化け物、その正面で剣を構える九尾の狐――、
いや、違う――!?
何が違うのかと思えば。九つあった尻尾が、僅か一本にまで減っていた。




