《第392話》『すでに、妾の中では討伐すべき存在となっている』
「――貴様は『道摩』と名乗っているようだが、鬼と成りて正気を失っている妾から邪気を封じた、『道摩法師』なる者か?」
『肯定します。私はあなたの前で、「道摩法師」と名乗っていた者です』
「――よもや、当時から脳ミソだけだったとは言うまいな?」
ごぼごぼと、水槽の中で泡が立っている。どこぞの近未来警察アニメのアレにも見えなくないが――。
『否定します。推測。あなたは、まだすべての記憶を取り戻しているわけではありませんね』
「記憶、だと――?」
確かに、妾の記憶――それらのピースが欠けていることは否定しない。
だが、そんなことを言ったらキリがない。一昨日のばんごはんは思いだせないし、テレビのリモコンをどこに置いたか分からなくなることもしょっちゅうだ。
「貴様は一体、何を企んでいる? 妾から邪気を切り離し、そうしてこの時代、今度はそれを手に入れて何をしようとしている?」
『…………』
足元でゴウンゴウンと、不気味な作動音がまたもや鳴り響く。道摩とやらは応えない。
こいつが何をしようとしているのかはわからないが、ものすごく嫌な予感がする。それにこいつは、何を考えているのかわからない。それこそ、世の平和を乱しかねない行動さえとっている。となれば――、
「何置いても、とりあえず沈黙してもらうぞ!」
床を凹ませるほどの力を込めて、脳ミソの入った水槽へと突撃する。見るからに、外に飛び出せばアイツは終わるだろう。
――だが、やはりというべきか。そう簡単に触らせてはくれない。
部屋の周囲から、クナイ手裏剣のような刃が、20程飛び出してきた。一つ一つに、退魔の呪力が込められている。
「ちっ、こんなモノ――」
空間移動を利用し、脳ミソの入った機械の真上へ移動。これで回避と同時に、奴を叩ける――! と、そう確信したのだが。
「な、なにィッ!?」
刃共は飛来途中でピタリと停止。向きを変え、曲線を描きながらこちらへと向かってきた。
「っ、まるでファン○ルではないか――ッ!」




