《第386話》『強力な一個体』
「し、しかし、娘、娘かぁ――」
「未来から来た、という言葉が付けたされるけどね。大切な僕らの娘だよ」
「だめじゃ、頭が痛くなってきた――」
まあ、僕も初めて聞いた時は混乱したし、彼女の困惑もわからないでもない。
だが、今は――、
「えぇー? ちょっとちょっと、こんな展開は予定されてなかったはずよぉ~?」
あのヒト達に、対処しなければならない。
「樹那佐 夜貴。あやつらはなんじゃ?」
「ま、まあ、誘拐犯――じゃないけど、えっと、なんて言うべきか……」
「少なくとも、あの娘たちや狂鬼姫の四天王たちの状態から鑑みるに、あからさまに余にとってもよろしくない奴らじゃろうな。なぜ貴様がそれと敵対しているのかは皆目見当つかぬがのう」
「それにしても、あなた、ホント何者なのぉ? 結界、効いてないみたいなんですけどー」
「結界? ああ、確かにそんなモノが張られてはいるな」
「そ、そうだよ、謳葉や活葉、四天王たちは呉葉に匹敵する力を持っているはずなのに――」
僕らの疑問。それを耳にするなり、鳴狐は妙に自信たっぷりな笑みを浮かべはじめた。あ、多分これ、俗にいう「ドヤ顔」ってやつだ。
そんな彼女が、剣を構えて鈴木さんたちを睨む。
「なぜ、だと? それは簡単じゃ」
「――っ!」
「余が、絶対的で完全な力を持つ、九尾の狐だからじゃ――ッ!」
鳴狐は、すさまじい妖気を滾らせながら、飛び掛かろうとした。
――次の瞬間、着物の裾を自ら踏んでこけた。




