《第386話》『ギャグ漫画なら多分目が飛び出る表現出てる』
「藤原 鳴狐――!?」
「どうしたのじゃ、狂気鬼の夫とのたまう樹那佐 夜貴っぽい生き物よ。そんなところで寝そべって、風邪でも引こうというのかえ? 変わった趣味じゃな」
「呉葉みたいにツッコミどころ満載なこと言わないで――!」
その上から目線な、九尾の狐の娘、藤原 鳴狐。はっきり言えばこのヒトは人間を敵対視しているヒトだが、正直今のこの瞬間は助けられたと言わざるを得ない。
「で、でも、一体何をしに――?」
「決まっておる。あの狂鬼姫のアホタレからアレを取り返そうと気配を追ってきたのじゃ。して、その狂鬼姫は――」
鳴狐の目線が、ゆっくりと弱々し気に立ち上がる謳葉と活葉に向く。
「――狂鬼姫?」
「う、いた、たた、た――」
「まだ結界が解かれてない――重い……」
「…………」
鳴狐は、二人をじっと見つめている。というか、固まっている。こちらからではその表情を見ることは出来ないが。
まあでも、てっきり「幼児化して分裂しておるぞえ!?」とか言うんじゃ――、
「ふぅむ、例の幻影だとか言うヤツとこうして並んでいるのを見ると、やはり見分けつかんのう」
「そういえばそんなのもいたね!?」
「あ、なに? 違うのかえ?」
「そりゃあね、そりゃあ呉葉は幼児体型気味だけど、あそこまで小さな子みたいな姿はしてなかったと思うよ!? いやまあ、気持ちは分からないでもないけど!」
「――貴様が一番、あやつに失礼なことを言っておるのではないのかえ?」
そうは言うけど、事実だものだから仕方がない。呉葉は本当に、子供っぽい容姿をしているのだからだ。
「――えっと、じゃな。要するに、あの二人は狂気鬼ではないのじゃな?」
「僕と呉葉の娘!」
「なに? 娘とな?」
「そうだよ!」
僕の方を振り返り。そして、双子を見比べ、そしてまた僕の方を振り向く鳴狐。それが一度、二度、三度。目は見開いてまん丸で、妙に早い瞬きが数回。そして――、
「む、むむむ、娘ェえええええええええええええええええええええッッ!?」
「その純粋な驚きが欲しかった!」




