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《第380話》『ふざけたような、ホントの話』
「――っ、二人を離してください……ッ」
「っ、待て危険だ――!」
明らかに、異常な状況だった。零坐さんの止める声を後ろに、僕は佐藤さんや高橋さんを娘たちから引きはがすべく駆けだす。
しかし――、
「主婦ステーッキ!」
「かは――っ!?」
「おとーさん!?」
「――ッ!」
鈴木さんがそれとなく放った、見た目もごく普通のおたま。どこから取り出したかもしれぬそれは、どう考えてもおかしな速度で僕の鳩尾にヒット。
そればかりか、そのまま軽く体が宙に浮く。そしてそのまま、零坐さんのところまで吹き飛ばされた。
「ぐ、げほっ、げほっ! ――ど、どうして、謳葉と、活葉、を……、」
邪気の影を滅するために集めた、と聞いていたのに、なんでそんな彼らが僕の娘二人を捕らえようとするのか。
意味が、まるで分からなかった。
「んー、これ言ってもいいのかしらねー?」
「――?」
「んじゃ、ご近所さんのよしみでヒント! 人と鬼の血が競合しあうことなく混ざり合うこの娘達は――『繋ぎ』になってもらう、らしいでーす!」




