《第378話》『伸ばされる手』
「――零坐さん」
「ぎくっ!」
何を問いかけてもまともに返事が帰ってこないので、流石におかしいなと思い。零坐さんなら何か知っていると話しかけたら、妙な反応が帰ってきた。
「あのー、零坐さん?」
「知りませぬ! わたくしはなァんにも知りませぬ!」
――怪しい。すっごく怪しい。
この適当な、投げやりの呉葉の返事。あらかじめ決められてそれを返すだけのような、そんな様子。そして、零坐さんのこの慌てよう。
「零坐さん、この呉葉――」
「そうなのです、呉葉様が作って置いて行った人形なのでございますゥ!」
――僕が言う前に、自白されてしまった。
…………。
ええっ!?!?
「呉葉様は、自分一人で解決すると言って、気が付かれるまでの時間を稼ぐために、自らのダミーを置いて、お一人で――」
「つーん」
っ、全くもう! 呉葉は!
あれほど一人では駄目だ。みんなで力を合わせて、全員無事で終わろう。そう、あれほど言ったのに!
「ど、どこへ行ったの――!?」
「正確な場所は一切告げられては――」
「う、うう――ッ」
連れ戻そうにも、場所が分からないのでは話にならない。僕は呉葉と違って感覚は人間の範囲を逸脱していないのだから。
――いや、もしかしたら、謳葉や活葉なら……?
「謳葉! 活葉! 君たちなら、呉葉を――」
そう思い、振り返ったその時だった。
佐藤さんが。鈴木さんが。高橋さんが。ウチの大切な子を取り押さえる瞬間を見たのは。




