《第377話》『つーん』
「もうっ! いーかげんにしてよ、おとーさんもおかーさんも!」
「――っ!」
謳葉が地団太を踏み、地面が少し揺れる。ちょっと転ぶところだった。
「こんなふうにいがみあってるときじゃ、ないんだよっ!」
「そ、それは、わかってるんだけ、ど――」
「わかってないっ!」
「――っ!」
ずしん! と、さらに直下型震度5。こんなに可愛らしい容貌でありながら、そのパワーは流石呉葉の娘――。
「謳葉、少し落ち着きなさい」
「うーっ!」
「やりすぎると、地盤を刺激しすぎるわ。――でもまあ、謳葉の言うことも全くもってその通り。協力するつもりはあっても、不仲な状態じゃ、いつそれが大事な場面で転ぶ原因になるか。分かったモノじゃないわよ」
改めて言われなくとも、そんなのは分かっていた。分かっている、けども。だけども。どうにもならないことが、大人にはあるのだ。
――けど、
僕だって、このままずっといがみ合ったままでは居たくない。脅威への対抗とか、そんなモノ以前に。夫婦として、円満な間柄を続けたいのだ。
「――うん、分かったよ。僕なりに、呉葉と話してみる」
謳葉と活葉にそう言って、僕は意を決して呉葉の元へと歩き寄った。心配なのか、二人は僕についてくる。
「ねぇ、呉葉」
「つーん」
「その、あの、僕の話を――」
「つーん」
「――呉葉のゲーム、全部捨てちゃうよ」
「つーん」
「…………」
「つーん」
「――何か、様子おかしくない?」




