《第372話》『現実(リアル)世界にのしかかる白く黒き闇』
「なん、だ? こいつは――」
およそ身長180cm、筋肉のつき方からして体重は80kg前後、と言ったところか? 身体は紙粘土のように白く、目、鼻、口はあるが、皺や眼窩下孔、頬骨と言った、おおよそ人相と認識できるモノが見当たらない。
妾の脳裏に、人面ノッペラボーと言うワケのわからない単語が思い浮かぶ。それ程にまで、この存在は、妾が見てきたモノの中で異彩を放っていた。
『「UK-00000002」へ、「UK-00109253」の植付を開始します』
不安を煽る機械音声が響く。同時に、今まで邪気の影を拘束していた霊力ビームユニット(妾命名)が壁に収まり、代わりに天井より無数のアームが降りてくる。
「ギャ、ギ、ギャ――?」
拘束から立ち直れていないのか、邪気の影は成すすべなく掴みあげられた。そして、別のアームが固定した白い人型へと押し付けられる。
「ナニ、ヲ、スル――!? ヤ、ヤメ……ッ」
邪気の影は今際の虫がもがくように抵抗するが、まるで効果が無い。妾が呆気にとられその光景に立ち尽くしていると――、
邪気の影は、完全に白い人型へと埋没してしまった。
「一体、何をした――?」
『工程の第一段階を終了。成功を確認』
「何をした、と聞いて――ッ!?」
妾の声を遮るように、何かが妾の頬を掠めた。
「な――!?」
「ギギギ、フシュルゥ――……コイツハ、イイカンジダ――ッ!」
飛んできた――否、伸びあがってきたのは、人型の腕だった。身をそらさねば、頭を叩き潰していたであろうそれ。妾の頬から、赤い血が垂れる。
『工程の第二段階を、開始します』




