《第371話》『古(いにしえ)よりの成功率』
「何? それは、本当なの、か――?」
『反応より、樹那佐 夜貴から伝えられていないと推察します』
聞いていないも何も、今、妾とアイツは喧嘩中だ。そのため、集合自体は一度しても、どこに本部があるのかと言うことも含めほとんど口を聞いていなかった。そもそも、妾一人で解決にかかるつもりだったし。
『状況の誤認を確認。計画の道程を一部変更します。この変更における成功率の変動は――、』
「――?」
目の前では邪気の影が縛られたまま、周囲では相変わらず機械がウォンウォン作動音を響かせている。
その音は、まるで生者をより深淵の奥へと引き込む子守歌のように、終わりなく、そして果て無く流れていくかのようだった。
それが、妾を妙な不安にかきたてる。これまで色々なモノと戦い、様々な光景を見てきたわけで、すなわちこんな気持ちを自分自身のことで味わうことなど、ないモノと思っていたが――。
『成功率が6%減算されました。計画の結果に大きな支障は発生しないと判断。引き続き、プログラムを実行します』
「っ、さっきから何の話だ――ッ」
妾は部屋の天井へと向かって怒鳴り付けるが、「道摩」と名乗る者は答えない。
そもそも、人間味の感じられない声色、口調。こいつ、本当に何なのだ?
そんなことを思っていると、突然部屋の中央に穴が開いた。何かが、底から上がってくる。
『「UK-00000002」、正常な動作を確認。実行します』
空いた穴から現れたモノ――それは、一切人相の無い真っ白な人型だった。




