《第370話》『国の平和を統括するモノ』
『ようこそおいでくださいました「UK-00000001」、狂鬼姫よ』
明かりの灯った部屋に、天井から抑揚のない機械的な声が響く。なんだ、その「UK」と言うのは。ちょっとカッコいいじゃないか。
しかし、こうして照らされると、やはり恐ろしく広大な部屋だと言うことを、妾は実感する。円筒形であるが、面積で言うならば小学校の体育館程はあるだろうか。ぽかんとした邪気の影と妾の二人だけでは、この一点の汚れも無く冷たい光沢の白い部屋は、もの寂しさすらある。
「貴様、何者だ?」
『申し遅れました。私は、平和維持継続室総括室長、「道摩」と申します』
「『道摩』、だと――?」
その名前は、妾の邪気の部分を封印したと言う「道摩法師」と同じだった。偶然同じ、と言うにはまず滅多に聞かない名前だ。
「ジギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
「――っ!」
意識を外していたためか、邪気の影が耳障りな叫び声と共に襲い掛かってくる。
――が、
『目標の一時的沈静化を行います』
「ギ――ッ!?」
部屋の壁より出現した突起から、電撃のようなモノが放たれる。それだけで、邪気の影はその場に縫い止められたかのごとくピタリと止められた。
――放出されたそれは、霊的エネルギーだった。何故だか、妙な懐かしささえ感じるような質の。
「道摩、と言ったな。まず、聞きたいことがある」
『質問をお受けします』
「なぜ総括室長などと名乗る貴様が、ここに居る?」
道摩と名乗る者は、その気配をこの部屋で一切感じさせることなく、返答する。
『お答えします。ここが、「平和維持継続室」の本部であるからです』




