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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第十三章
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《第367話》『暗黒の意志』

「ハッ! うぬぼれるな残りカス風情が。妾が真に恋しきは、それぞれ光、そして闇に生きる同胞達よ」

「ククッ、言ヨルワ。サテサテ、果タシテドチラガ残リカスカナ?」


 ただひたすら、真っ暗なその場所で。妾は邪気の影と対峙する。この暗がりの中でも目の利く妾には、ヤツが不敵に笑っているのがよくわかる。

妾の愛するヒトの顔で、そんな邪悪な微笑みはやめてほしいのだが。


それはさておき、ここは一体何なのか。

一つとして照明が灯ることなく、その中、周りでは機械の作動音が鳴り響いていた。まるで、誰もいない音楽室からピアノの音が鳴るような不気味感――と言えば、例えが綺麗すぎるだろうか?

誰もいないことと言い、唐突にSFチックになる地下と言い。本当にこのビルは何なのか。

――いっそ、目の前のコイツに聞いてみるか。そもそも、コイツがここへと入ったから、妾もここに居るのだから。


「おい、この場所は何だ? 随分と急いでもぐりこんだみたいだが」

「ググッ、コノ場所カ。サテ、ナ。我ニモ分カラヌ。我ハタダ、色濃イ邪気ヲ吸収スルベク求メタラココニ辿リツイタダケヨ」

「邪気――?」

「ワカラヌカ? ココニハ、我ニ匹敵スルホドノ強イ邪念ガ滞留シテイルノダ」


 妾は感覚を集中させ、周囲の気配を探ってみる。

 ――驚いたことに、ここにはとてつもない密度のそれが満ちていた。邪気の影があまりに妾を息苦しくするせいで、この場の黒き気配を察知できずにいたのだ。

 そして、邪気の影はそれを自らの力とすべく飛びこんで来た、というわけだ。


「ググッ、オカゲデ我ノ力ハ更ニ増スノダ! 兼ネテヨリ集メテ回ッテイタガ、コレホド美味ナルモノハ他ニナイ!」

「その力を使い、そして妾を取りこみ――何をするつもりだ?」

「知レタコトヨ――」


 邪気の影の姿が、歪む。全身から触手のようなモノが伸びあがり、それら全てが禍々しい牙を生やし始めた。

 その姿はまさに異形。人の顔が鬼の形相と化し、悪鬼そのモノを体現したかのようにまで変わり果てる。


「全テノ器物、文明、生命、目ニ映ルモノ全テノ殺戮、ダァァアアアアアアアアアアッッ!!」


 妾から出た錆の後始末が始まった。


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