《第366話》『奈落の穴』
「つい思わず下までぶち抜いてしまったが――どうやら、意外と間違ってはいなかったようだな」
底の底まで突き抜かれ、ここが地上100m越えであるにもかかわらず深淵の奈落のようにも見える穴。その奥へと、まるで餌の在り処を見つけたネズミのごとく駆け流れていく邪気。
それは、まるで何かを目指しているようだった。本当にヤツの食い物があるのではないのか、と言うほどの勢い。
「さて、何が目的なのかは知らんが――」
妾もまた、意を決し、その穴へと飛びこんだ。
目指すはヤツの待ち構える地の底。地獄への入り口のようなそれも、今の妾にとってはそこで全てを終わらせろという暗示にしか思えない。
「全てまとめて、妾が叩き潰してやろう!」
下の階へと落ちていくに当たり、それぞれの階の断面が視界に入る。人どころか、生ける者一つ居ないビル。
建物の倒壊の恐れがあるが、少なくとも、この場所には誰もいないため、気を使う必要はあまりなさそうだ。
――そうして、降りた一階、その下の地下空間。
「ソレ程ニマデ、我ガ恋シカッタカ? カツテ狂鬼姫ト呼バレシ鬼神ヨ」
以前と同じように夜貴の姿を取りながらも、さらに妖力の増大した邪気の影が、そこにいた。




