《第362話》『ふだんあんまりけんかしなかったってきくけど、ほんと――?』
「わ、わたしたちにちゅーいしておいて、じぶんはやっちゃうんだおとーさん――」
「流石あなたのおとーさん。自由人ね」
「あなたのおとーさんでもあるんだよ!?」
謳葉と活葉は考えた。このままでは、邪気の影をきっかけとして、取り返しのつかない事態をこの時代に招いてしまう。
それを引き起こさないためにも、夫婦喧嘩は解決しておかなければ。
「ねぇ、おとーさん。おかーさんと、仲直りしましょう?」
「僕はそのつもりだよ。けど、呉葉を見てよ」
「ねーねーおかーさん。おとーさんとなかなおり、しよっ?」
「仲直りも何も、妾は別に喧嘩などしているつもりはない」
「で、でも、でも、すごく、そのっ、ケンアク、な――」
「知らん。妾には妾の、しっかりとした役割があるのだ。だが、あいつがそれを分かろうとしない」
「き、きっとそれだって、おかーさんのことかんがえて――」
「言われずとも分かっている。夜貴は、そう言うヤツだからな。だが、妾にとて譲れないことがあるのだ」
「――ね? 向こうがそもそも、そんな気なさそう」
「だ、だけど、このままでいいとは、とても思えないわ」
「――うん、そうだ、ね。僕も、二人と同じ気持ちだ」
夜貴は、活葉の頭を撫でる。
「ん――」
「けれど、呉葉は一度こうだって思うと、考えを変えないから、ね――」
活葉は、頭を撫でられ、心地よさに目を細めながら思う。
「(――おとーさんにも、おかーさんにも、笑っていてほしいのに、な)」




