《第361話》『――そんなことしてる時じゃないってのは分かるんだけど、それでも、心は』
「ふんっ!」
平和維持継続室のエリートを連れて行くと連絡し、待ち合わせ場所――組織の中心たる建物、その近くに張られた結界内で呉葉と顔を合わせたらこれである。どうにも、機嫌が悪いらしい。
まあ、原因は分かってるんだけど――。
「…………」
「樹那佐さぁーん! 狂鬼姫さんがすっごく不機嫌だわよーっ! ――って、佐藤さんが」
「一っ言も喋ってませんよね佐藤さん!? ――まあ、そもそもが意見を違えたままだったです、し」
「ひっひっひ――」
呉葉は一人で戦うと言い、人員は万が一自分が駄目だった時のために人を集めた。
一方、僕はその人員を、彼女と共に脅威撃退のために役立てるつもりだった。
そこで、僕らの意見は真っ二つ。一応召集には応じてくれたみたいだけど、僕の注意は全く聞き入れるつもりはないらしい。
「おとーさんもおかーさんも、けんかしちゃだめっ! だよっ」
「そうよ。珍しく謳葉がまともなこと言ってるんだから」
「わたしはいつもまじめだよっ!?」
「すぐに他事に気を取られて全く関係のないことをいうぼんやりさんに、説得力ないわ」
「ちょっと! ひどいよ活葉!」
「でも、事実でしょう?」
「はいはい、そういう二人も喧嘩しちゃ駄目だよー。――それにしても、どうしようかな」
僕は心の底から呉葉のために、呉葉を想う周りの人のために言ってるのに、彼女は聞き入れてくれない。
呉葉がへそを曲げた時、いつも僕が謝ってきた。だけれども、こんな状況で、ここまで心を砕いているのにこんな態度を取られたら、僕としてもむっとせざるを得ない。
――だから僕も、
「ふんっ!」
と、へそを曲げてやった。




