《第352話》『過去の紙片・三枚目』
「白鬼、慰めてくれェ!」
「死ね」
道摩法師へと、白鬼は今しがた集めてきたばかりの木の枝を投げつけた。
「い、痛いぞ白鬼――っ!」
「なぜわたしがお前を慰めてやらねばならん」
「我、汝の恩人ぞ――?」
あんまりにも悲しそうな顔をするので、白鬼はため息をついて木の枝を束にする作業を一旦一段落置く。月の姿が一巡する程度の日にちが経ったが、時々外に出ては行っている、焚き木の収集作業だ。
「――で、何があった?」
「安部晴明にまたしてやられた――」
ずぅんと沈む道摩法師は、本気で落ち込んでいるようだった。しゃがみ込み、俯いてため息一発。――が、
「なんだ、いつものことか」
と、白鬼は一刀両断した。
「いつものこと、ではない! 今日こそは我が術比べで奴の上を行く予定だったのだ! さすれば、褒章が貰えたものを――」
「自称一番の陰陽師が、貴族の道楽ごときで何を――」
「そうである、が! そろそろまともな調味料が欲しい!」
「庶民は調味料などないぞ」
「我は貴族と庶民の食事のいいとこどりをしているのだ。生野菜や獣の肉など、食ったことなかったろう?」
「まあ、それは――」
一応、食事は貴族のモノを食べていたために、白鬼も塩漬けや干物ばかり今までは口にしていた。
ところが、道摩法師とかかわるようになってからは、庶民が食べていると言う肉や新鮮な野菜、雑穀を中心とした食生活となっている。
「ああ、くそっ! 忌々しい安部晴明め!」
「――とはいいつつ、実は楽しんでる?」
「うむ!」




