《第347話》『平和維持継続室が意図していること。僕には到底想像もつかない』
「…………」
「きゃーっ! 樹那佐さんちの旦那さんじゃなぁーい! おっひさーっ!」
「いっひっひっひ、い~っひっひっひっひ――……」
寡黙な大男の佐藤さん。やたらと声が甲高い主婦、鈴木さん。不気味な笑い声をあげる老婆、高橋さん。
僕は滅多に行かないからそう顔を合わすわけじゃないけど、呉葉が町内会の寄り合いに行った日には、ほぼ毎回彼らに関する愚痴をこぼすのだ。
「えっと、その、呉葉のことは聞いてると思いますけど――」
「…………」
「あのー……」
「きゃははははっ! 聞いてるよ聞いてるよ♪ そもそも、私達は樹那佐さん、もとい呉葉さん、もとい、狂鬼姫の監視のためにあの街にいたんだもん!」
――なるほど、近所に住んでいた彼らが、平和維持継続室の選ばれし精鋭なのではなく、選ばれし精鋭だから、近所に住んでいた。
と言う事は、そもそも平和維持継続室そのモノが、呉葉が生きていることをとっくに知っていた、と言うことになる。
じゃあ、なぜ「狂鬼姫を退治しろ」などと言う指令が出されたのだろう?
「ひっひっひっひっひ――」
「――えっと、」
「いひっ、いひひひひっ」
「あのー、高橋さん?」
「きゃあんっ♪ その子達が狂気鬼の娘ちゃんたちね! きゃーっ! かわいい!」
「ひゃっ!? ちょ、ちょっと!?」
「ぎゅってしない、でっ! 苦しいわっ!」
――今は、このヒト達のことを呉葉に連絡することの方が先決だ。




