《第346話》『身近なエリート』
『選抜した三人をお送りします。樹那佐 夜貴。あなたは彼らを狂鬼姫へと接触を取り計らってください』
たった十数分程なのに、再び電話をかけてきた室長は一方的にそう言いつけていった。そして、当然のようにすぐに通話は切られてしまう。
「おとーさん、でんわなんだったのー?」
「室長が、邪気の影を討伐するために選んだヒトたちを、呉葉と合わせてあげてほしいんだって」
「おかーさんに――? 大丈夫?」
活葉の心配も、少しわかる。互いに相いれない存在が顔を合わせたらどうなるか。
勿論呉葉の方には信頼を置いているし、彼女ならまず協力を第一と考えるだろう。だが、平和維持継続室側の人間が、どんな行動に出るか。
僕は当事者だから、未来の危機が間近に感じられる。あの呉葉が重苦しい表情と声で語った「邪気の影」は、本当に将来を脅かすのだろう、と。
けれど、これから会うヒトたちはどうなのだろう。本来相対すべき存在がどれほどのモノなのか、そもそも真に恐ろしいモノなのか。知る由もないそれを隅におき、もしかしたら呉葉の討伐にかかるかもしれない。それは、正体のよく分からない室長も含め、だ。
――そうして、彼らが僕他の前に姿を現す。
「えっ、あなた達、は――!?」
そこに現れたのは、ご近所さんの佐藤さん、鈴木さん、高橋さんだった。




