《第342話》『その暗雲は現か幻か』
呉葉がまとめた話の中で、平和維持継続室の室長は、未来のことを何らかの方法で知っている、と言うことを聞いた。
ならば、僕が聞くべきことはこれだ。
「その『UN-00109255』を撃破するにあたり、その戦力は充分なのでしょうか?」
『対象の衝突予定時刻での能力における戦力と、私が選別した人員、さらにそこに狂鬼姫、さらに彼女が用意した人員が加わった戦力を比較した場合、勝率は100%と断定します』
「…………」
勝率100%。すなわち、それは必ず勝てる、と言う事だ。そんなこと、小学生でも理解できる。
だが、何か僕は引っかかった。錠剤を水で流し込んだはずなのに残っているような、そんなどうにも釈然としない気分。
「――人間の、と言うより、人ならざる者に対抗する組織と、そんな人ならざる者達の集団が、うまく共闘なんてことができるのでしょうか?」
『私の用意する人員は充分な信頼が置けます。また、狂鬼姫はかつてより幾ばくか衰えていますが、それでも充分な統率力があります。私が導き出した計算は、予想される互いの敵対意識を考慮した結果によるモノです。その上で起こる誤差を含めた上で、確率は導き出されています』
そうは聞いても、このもやもやとした気分は晴れる様子はない。
勿論、これまでずっと続いてきた平和維持継続室の系譜の、その一時代を破綻という破綻の無いまま動かしてきた道摩室長。
一方、長き時の間、非常に多くの妖怪の長として努めてきた上に、そのカリスマ性(普段はか今も見せることは無いが)を持つ狂鬼姫・呉葉。
この二人がまとめ上げることに、その手腕に、疑うべきところはない。そのはずなのだ。
――けれども、それでも。
正体の読めない何かが、周りを包んでいる気がして、このままではよくないことが起こる。と言った予感が、拭いきれなかった。




