《第341話》『道摩』
『そろそろ連絡してくるころだと思っていました、樹那佐 夜貴』
携帯から電話をかけると、機械で加工された、性別不詳の声が返ってくる。呉葉に見せられた推理モノのアニメ映画をちょっと思いだす。
電話をかけた先。それは平和維持継続室総括室長である。彼、もしくは彼女は、「道摩」と自分のことを名乗っている。
自身の名乗り以外、それを知る人間をボクは聞いたことが無い。そもそも、その呼び名も、さらに言えばコンタクトを取る方法も知るヒトはほとんどいないのだと言う。
――僕がこうして知っているのは、ある日突然伝えられたから、以外に言いようのない唐突さで伝えられたからだ。
なお、道摩氏と話したのはこれで二回目。一回目は、僕が平和維持継続室へと入った時。ただそれだけだ。その時も、今のような加工音声で一方的に話を聞かされた覚えがある。
「――つまり、どう言うことでしょうか?」
『あなたがこうして連絡をしてくることが、分かっていたと言う意味です』
「いや、あの、だから――」
『あなたが連絡を行ってきた理由は、狂鬼姫の件ですね?』
――今日でたった二回目であるが、このヒトとはまともに会話できる気がしない。多くは語らず、質問を否定することは無いが、かといって今のように表層の部分だけしか答えないのだ。
と言うか、会話していると言う気がしない。一方的に話を淡々と述べるだけ。まるでラジオのニュースを聞いているかのようなのだ。
『現在、あなたに潜んでいた脅威、仮称「UK-00109255」への対策に当たる人員を選別中です。決定予定時間は68時間後です』
そう、今のように。まるで、未来予測のできるロボットか何かのようだ。




