《第336話》『鬼神の驕り』
「おとーさんには、おかーさんの考えてることがバレてるの――?」
「まだ、知らないかな。――うん? おとーさん……?」
「――しまったわ」
謳葉が未来のことを話してはならないことを忘れて口を滑らせ、それを活葉がたしなめると言う光景はたびたび目にしていたが、それをしていた本人が、よもや口を滑らせるとは。
――というか、しまったと言う割に、その本人の表情は大して変わりがない。もしや、わざとではあるまいか。
「――夜貴。この二人は、未来より時を旅してきた、妾達の娘だ」
「えっ、え――? えぇッ!? 娘ェ!?」
どちらにせよ、もはや隠しておくことは苦しいと感じていた。証拠が出そろっているとか、口を滑らせたとか、そう言うことではなく。
妾が心配と不安で今駆け付けてきたのと同じように、何を隠そう、この妾自身が夜貴を心配に、不安にさせていたことに気が付いたからだ。
だから、妾は夜貴に渋々話した。未来でのこと、夜貴の身に起こったこと。それらを全て。
「――だが妾とて、お前をこれ以上危険な目に合わせとうなかったのだ」
「そうだね。呉葉のことだから、きっとそうだと思った」
「っ、ならば、分かっていたならなぜこんな真似を! 少しは妾の意を組んでくれてもよいではないか!?」
「呉葉、君はすごく勘違いしてるよ」
「何――?」
「君は確かに強大な力を持つ鬼神だ。時々衰えたとか言われたりもするけど、やっぱりその力の強さは間違いなく本物で、誰よりも強い存在であることを僕は知ってる」
夜貴は、変わらず妾をまっすぐ見つめてくる。揺るぎない意志もそのままに。
「けど、一人で何でもできると思っているのは、傲慢が過ぎる」




