《第332話》『呉葉をホイホイする方法』
『えっ、呉葉ちん? あー……たった今さっき、ここに居たんだけど』
と、電話の向こうのディア先輩。
「呼び戻すことは出来ませんか――?」
『うーん、多分無理――かも。イジワルなこと言っちゃったんだよなァ、さっき』
「イジワル?」
『あー、まあ、アンタに関係はあるけど話すべきことじゃない、かな。かーっ、もうちょっと柔らかく言ってやるべきだったよ』
「何を言ったのかわかんないですけど――あんまり極端なこと言うと、呉葉は意固地になりますよ……?」
呉葉は、自身が鬼神と呼ばれたほどの鬼だからか、上からものを言うと反抗期の子供みたいに反発するところがある。そして思いの外頑固だ。新しい物好きの割に。
『――で、呉葉ちんに用事かい?』
「なんだか、困ってるような気がして――けど、多分それは僕が今検査入院してることもきっと関係してて」
『で、アンタは呉葉ちんのことだからきっと、直接本人に連絡を取っても、全部解決してからじゃなきゃ話が煙に巻かれるだろうと思ってここへと電話をかけてきたわけだ』
流石ディア先輩。何でもお見通しのようである。
『アンタらが夫婦で居られる理由が、なんとなく分かるってもんだね。コーハイの』
「でも、今の様子だと、そちらから連絡しても取りあってくれなさそうですね」
『――どうするつもりだい?』
「ホントはこう言うことしたくはないけど、状況がかなり切迫しているような気がするので、こう連絡してください」
僕は、その内容をディア先輩に伝える。
『――それ、直後に絶対アンタら大喧嘩になるんじゃないかい?』




