《第322話》『偶には平和を、と思った時こそ破壊される』
「はぁー……」
アタシの名はクラウディア・ネロフィ。平和維持継続室に所属する、人間とは異なる存在への対策を主な仕事としている女だ。
しかし、今日はそんなお呼ばれは無く。そして書類仕事は風に舞わせてしまったために、やることが無い。椅子に座って足を組み、エアコンの利いた部屋でくつろいでいるのが現在だ。
「にしても呉葉ちん、どこ行ったんだ」
病院内で警報が鳴って、急いで行ってみたら壁に穴。呉葉ちんに何かあったのか、と思い追いかけようとしたら、「追いかけることもせず見なかったことにしろ」と連絡が入ってくる。それでも追いかけようとすれば、まず生死にかかわる罰が与えられたことだろう。あんな警告は後にも先にも聞いたことが無い。
正直謎が謎を呼ぶ状況で、追いかけたいところだが、徹底的に止められては、こちらにも成す術がないのだ。よって、今は天井を見上げながらも事態が何事もなく収束することを祈らざるを得なかった。
――つくづく、自分は無力であると言うことを思い知らされた一日。アタシは、大してうまくもないコーヒーをすすり、
パリーン!
「おいディア! いるか!?」
窓ガラスが割れる音と共にそれをデスク上に噴き出した。




