《第320話》『失敗した任務』
「それで、お前たちはどうするのだ?」
大事をとるために、完全に人間に戻った夜貴は今、平和維持継続室が管理している病院で検査を受けていた。妾が運び込まれていたあそこだ。
今は、夜貴の病室とは全く異なる個室で、謳葉、活葉と対面している。
「まず、未来ではお前たちとイヴは、平和維持継続室に所属している」
「えっ――!?」
「そしてお前たちが送られて来た理由、使命。それはあの邪気の塊を生まれたばかりの対処しやすい時代に倒すためなのだろう?」
「――っ、」
これほどにまで分かりやすい状況などない、と言えるだろう。この二人が組織所属で、しかもその重要性が知られていなければ、こんなところでのんびりできているはずがない。
ここからの脱出も、一度あれだけ派手にやらかしておいてこのゆったりとした時間は、他に説明が付かない。
勿論、ここでこうしている以前から、なんとなく予想は出来ていたが。なぜならば、
「そして、少なくとも妾――いや、ともすると夜貴も、か。未来では死んでいるのだろう」
「それは――」
「お前たちの言動。初めて会うかのようなその言葉に、もしかしたらそうなのではないかと思っていた。でなければ、わざわざ母親に『あなたは~』などと聞くはずもない」
「…………」
「そして――きっと、それはあの邪気の影の仕業。未来から早いうちに処理しにやってくる必要があったのは、もはやその時すでに対抗できる術がなくなっていたから、と言うことでもある」
勿論、妾が健在ならば妾が送りこまれていただろう。と、もし未来でも健在であればとも思ったが、自分への信頼があるようには思えなかったため、そこは口にしない。
「それが、お前たちがこの時代へとやってきたことの真相――なのだろう?」
正直、二人のつらそうな顔を見ている今、こんな確認を行っているのは妾としても心苦しいからだ。




