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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第十二章
315/1022

《第314話》『浮上』

「……-さん。おかーさん!」

「っ!?」


 呼びかけられ、私は、いや「妾」はハッとなった。

 目の前にあるのは、開け放たれた木造の扉、そして妾の面影を持つ二人の娘。どこにも、妾を閉じ込めていた扉も、そこから出した男も存在しない。

 他にあるモノと言えば、内臓ごと吐瀉物を巻き散らかしそうな程の重い邪気くらい。


「――おかーさん、顔色が悪いわ。大丈夫?」

「――お前たちは何ともないのか?」

「うーん? ちょっとだけ息苦しい、かなぁ?」


 どうにも、この強い気配を感じているのは妾だけらしい。謳葉も活葉も、平然とした表情でそこに居る。それを強がりだと言ってしまうには、この身が感じている邪気が重苦しすぎる。


「どうする? もう一度、出直す?」

「…………」


 正直、今すぐこの場から抜け出したいくらいの気分の悪さを感じていた。しかし活葉は、「向き合わねばならない」と言った。謳葉も、心配そうな目でこちらを見ているが、同じ意志を持ってここに妾を連れてきているようだった。


「――いや、行こう」

「――うん、わかったよ。おかーさん! わたしたちが付いてるからね!」


 娘二人はそれぞれ両側から妾の手を握ってくる。

 視線の先には、下へと下る階段。邪気は、階下の方が強いようだ。だが、確かな娘たちの手の感触に、妾は下る決心がつく。


 ――しかし、なぜこの娘らは大して何も感じていないのだろう?


「ソレハコノ邪気ガ、元々ハオ前自身ガ秘メテイタモノダカラダ」

「――っ!」


 目の前に突如、夜貴の姿を模しながら邪気の一部が集約した。

 妾の心を、見透かしたかのような言葉と共に。


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