311/1022
《第310話》『仄暗き光の中で』
そうだ、だんだんと思いだしてきた。
この光景は、かつて妾が平安の都に住んでいたころのものだ。その時の妾は、観音開きの門から取りつけられた小さな窓からのみ外を覗くことができる小屋のような場所で、軟禁されていた。
勿論、生まれたばかりのころはそんなことにはなっていない。しかし肌も髪も真っ白で赤い瞳であった妾は、この世に生を受けてから実の親からすらも気味悪がられていた。
しかし、どこぞかの呪術師がこの平安の都にて、明らかに奇怪な妾に目をつけた。確か、恐ろしい妖の力を閉じ込め、生き神として恐れ崇めることで、厄除けとして(と言うよりは厄寄せか?)役立てるだのなんだの。
よって、ここで妾に許されているのは息をしていることのみだった。後は、差し出された見た目だけは妙に豪華な食事をいただくことくらいか。
――そして何より、
この時の妾は、まだ人間だったはずだ。




