《第309話》『底にあった偽りの暗き光』
「し、白鬼が奇怪な呪言を発しただと!?」
「は、はいっ!」
兵士が、呪術師らしき男を呼んできたようだ。そいつらは、青ざめていた顔で何かを話しているようだった。
しかし、白鬼――? 妾にはあまりなじみのないない単語だが……。
もう少し、様子を見てみるか。
「して、どのような呪言を――?」
「わ、私に聞かれましても、異界の言葉など――」
「な、何となくで構わんから、話して見せよ!」
「え、ええっと、ぷ、ぷ――」
「…………!」
「ぷりけつ――?」
「おい貴様誰が貧相な尻だ誰が」
「ひぃ!? 白鬼が喋ったァ!?」
しまった、つい口を出してしまった。だが仕方ない。どちらかと言えばプラス思考な言葉でマイナスを連想してしまう程度には、この幼児体型を気にしている。誰も責めない。うむ、責めないだろう。
「ええい、今日は妙におしゃべりだな白鬼! お前は黙って都のために厄と邪気を引き寄せ続けていればいいのだ!」
「あっ、待ってください呪術師様ァ!」
それだけ言うと、そいつらはその場から去って言ってしまった。
――都、都か。まさか妾、過去の時代へと戻ってしまったと言うのか?




