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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第一章
31/1022

《第三十話》『贅沢な喧嘩の終わりに』

「――しかし、こんな日が来ることになろうとはな」

「うん?」

「ふーふげんか」

「あ、はは、は、は――? 初めて、だったっけ?」


 僕らは街灯に照らされた、まだわずかに空に光の残る道を歩いている。最初は恥ずかしかったが、今は手を繋ぎ続けていることに安らぎさえ覚える。


「妾が不満を言ってもお前はすぐに謝るし、我儘言ってもお前はうまいこと収めるしな。正直、すんなりと関係がうまくいきすぎて、時には物足りなさを感じることもあったくらいだ」

「だって、こっちが悪いと思ったら普通謝るものじゃない? 呉葉の我儘だって、僕の手を求められてるって思ったら、叶えたくなるよ。――無理難題は流石にどうしようもないけど」

「少しは妾を見習え」

「手のかかる子供は一人で充分だと思うんだ」

「お前が妾のことをどう思ってるのかよく分かる発言だな!?」

「でも、やっぱりそれは僕にとって嬉しいことなんだよ。呉葉が僕を頼ってくれればくれる程、僕自身に存在価値があるんだなって、思えるから」

「…………」


 突然、呉葉が僕の手を握る力が強くなった。


「――どしたの?」

「む? ああ、いや。何でもない」


 そうは言いつつも、呉葉はもう一方の腕を僕の腕に絡ませてきた。何もなく、こんなことはしてこないと思うのだが、不思議とそんなには気にならなかった。

 ただ、ちょっと――


「えっと、歩きにくい、かな――」

「黙れ。妾がこうしたかっただけだ。今日は一晩中抱き枕の刑だからな。ただずっと抱きしめ続け、身動きできぬよう拘束し続けてやる」

「はは――うん、わかった」


 今日も、そして明日も、さらにその先も。僕は、呉葉に振り回されるかもしれない。そのたびに、きっと大変な想いをするのだろう。


 けど、それでいい。やっぱり僕は、呉葉のことが大好きで大切なのだから。


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