《第308話》『沈んだその先』
「……――ハッ!?」
ドン、と重い物が落ちる衝撃のようなモノを感じ、妾は目を覚ました。
――覚ました? いや待て、先ほどまで眠りようがないほど目をパッチリ開けていたはずなのに、それはおかしかろう? と言うかここは――、
果たしてどこだ?
気が付けば、薄暗い木造建築の建物の中であった。周囲が見渡せるのは、目の前の扉に空けられた覗くための穴、そこから差し込む太陽の光のおかげであり、それが無ければ――。
妾は、いつの間に座っていたのかわからないが立ち上がり、そこから外を覗いてみることにした。
――身体が重い。まるで豆をたらふく食った以前の時にも似ただるさで、身体が動かない。
が、それでも状況を知るために足に力を込める。
――外に、人が一人こちらに背を向けている。
「おい、そこのお前」
「――っ!?」
声をかけると、大層驚いた様子でこちらを振り向いた。――何だこいつ、随分と古めかしい鎧をつけているな。
――いや、まて。まさかと思うが。いや、まさかと思うが……うむ。
「退屈だから、プレステ4持ってこい」
「ひっ! 白鬼が珍妙な呪文を!?」
そう言って、逃げていく平安時代風兵士の男。
――うむ、どうにもここは現代日本ではないらしい。




