《第302話》『狂鬼姫の苦手な幼女は功労者』
「気をつけるのだぞ、何が起こるか分からぬのだからな」
「は~い! あっ、おうまさんがある!」
「言ってる傍から! あと、アレはいいお馬さんではない! 子供は見ちゃいけない類のお馬さんだっ!」
久しぶりに訪れたかつての家は、誰も住んでいないために薄暗く、また、手入れもされていないためにところどころ蜘蛛の巣が張っていた。
零坐以外久しく会っていないが、他のしもべ達は一体どうしているのだろう? 偶には様子を知りたいものだ。
「もっとも、かつて狂鬼姫の住処だったその場所で胡坐をかく者など、そうはおらぬだろうがな」
「…………」
「む? どうした活葉?」
「おかーさんを見ていて思ったのだけど――」
「うん?」
「聞いていた話よりも、おかーさんはかっこいいわ」
「ぶふっ!? わ、妾はいつだってカッコいいだろう!」
「でもでも、イヴはおかーさんはドジで、まぬけで、おっちょこちょいで、くちがわるくて、」
「…………」
「おまけにきんせんかんかくくるってて、すぐおこって、おまけに――」
「ッ、まてまて、どこまで続けるつもりだッ! イヴってだれだ、もしや二之前 イヴか!?」
「イヴのタイムマシンで私達ここへ来たのよ」
「あいつの将来とんでもないな!? というか、何故妾の子に悪口を吹き込んでいるのだ!? どれくらい続くんだそれは!?」
「えーっと、いーち、にーい、さーん――」
「確か、あと46個くらいだったと思うわ」
「アイツ、覚えとけよ――ッ!」
「あ、あとおとなげないって」
「むきーっ!」




