《第299話》『信じがたいが信じざるを得ない突発的訪問者』
「お、お前たち、今この場でこんなことしたら――ッ」
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!
「――あり?」
「妾は今、軟禁状態だったのだ! このような力任せな脱出をすればこうなるのは目に見えている!」
「おかーさんの家じゃなかったの!?」
「それならそれでぶち破るのはやはりおかしかろう!?」
全く、その無茶苦茶な性格はなんなんだ!? 親の顔が見てみたい! ――いや、こ奴らは妾が母であると言っているのか!
「はぁ、全く――なんで状況に気が付けていないのかしら、謳葉は」
「ううっ、活葉ごめーん!」
「でも、まあいいわ。妖術を阻害する結界も一緒に吹き飛んでくれたもの」
そう言うと、活葉は片手で虚空を斬り裂いて見せた。すると、妾自身がどこでもドア的によく使う次元の裂け目が出来上がる。――結構疲れたりするので、ホント偶にしかやらないが。
それにしても――、
「さあ、謳葉、おかーさん。ここを通り抜けて逃げるわよ」
「行先はどこへつながっておるのだ?」
「おかーさんと、おとーさんと、わたしたちの家、よ」
「活葉ぁ! さいしょからここがおうちじゃないってわかってたんなら、いってくれればよかったじゃん!」
「当たり前すぎてまさかそんな思い違いをしているなんて思いもしなかったのよ」
「だってここはかこなんだよね? だったら、ふーけいがちがってたっておかしくないはずだよね!」
「いくらなんでも窓の外の景色が違うでしょ」
「ええい、言い争っている場合ではなかろう! 急ぐぞ!」
妾と同等の怪力、妖術、そして何より妾自身と夜貴のそれを混ぜ合わせたかのような気配。
――こやつらはやはり、妾の娘であることは疑いようもなかった。




