《第298話》『血縁関係フラグ』
「して、その娘とやらが何ゆえ妾の前に現れた? 人造人間でも暴れているのか?」
「じんぞーにんげん? なぁにそれ?」
謳葉と名乗る少女は、隣の活葉と名乗る少女に問いかけるが、そのもう一方は首を横に振る。――これがジェネレーションギャップと言うヤツか。いやいや、それ以前にあの名作を知らぬとは、いったい何ごとか。
「おかーさん。わたしたちは空想話で盛り上がるためにここへ来たわけじゃないの」
「なんだと! 妾の娘だと言うのであれば、ゲームや漫画やその他もろもろの現代娯楽で話に花が咲くはずだろう!」
「おかーさん、この時代のテレビゲームってどんなのがあるの?」
「うん? これくらいのサイズの折り畳み式で二画面付いている携帯ゲーム機やら、後は顔にデカいメガネ――」
「少し黙りなさい」
「あだァッ!? 仮にも娘を語るなら、親をハリセンで叩くとは何事か!」
「わたしもたたかないでぇ――」
果たしていつの間にそんなモノを取り出したのか、活葉の手には漫才のツッコミに使うようなそれが握られていた。なぜか妙に造りがしっかりがしっかりしていて、たったの二撃では壊れる様子は全くない。
「――で、本題なんだけど、おかーさん。あなたには、これからおとーさんに会いに行ってもらいます」
「何――? 夜貴のところへ?」
「そう! とゆーわけで――」
謳葉が元気よく返事をしたかと思うと、病室の壁と向かいあう。そして、腕をぐるぐる回し始めると――、
「たあっ!」
と言う掛け声と地鳴りと共に、その白い壁は砕け飛んだ。




