《第297話》『突如現れた合わせ鏡のごとく白き双子』
一週間前――……、
「あなたがわたしたちのおかーさん?」
「んな、なんだと?」
鬼と成った夜貴との戦いから、妾は軟禁されていた。流石の平和維持継続室も、「狂鬼姫」が未だ健在であることに気が付いたらしく、気を失っている間に「策」を講じたらしかった。
しかし、その「策」と言うのが奇妙だった。
以前、奴らは妾に「夜貴」と言う刺客を送りこんだ。すなわち、それは強大な妖怪である妾を討伐する意志があったと言う事。
しかし、にもかかわらず、今はあまりその様子が見られない。しかも、この病室の周りに張られている結界も、閉じ込めておくと言うにはいささか役不足で、その気になれば小指の先で敗れてしまえる程度の強度しかない。
「いきなりこんなことを言われても、確かに混乱するでしょうね」
「混乱も何も、まず振り向いたらそこにお前たちがいたことに、腰を抜かすところだったぞ! 妾、この歳でぎっくり腰になりとうない!」
「おかーさん、1000さいこえてるでしょー?」
「福祉関連のサービス、充分受けられそうだわ」
「き、貴様ら、妾の心をふかぁく抉るために現れたのか――?」
そんな場所に、まるで最初からいたかのように出現した二人。白い髪に赤い瞳。衣服はレースのあしらわれた白いドレスと、妙にファンシーだ。
謳葉と活葉の双子姉妹。二人は、未来からやってきた妾の娘だった。




