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《第295話》『黒闇』
「っ、夜貴――ッ!」
妾は身を起こし、愛する者の名を叫んだ。
「――? ここは……」
そうして、今自分が、知らない場所に居ることに気が付いた。
白い、どこまでも白い、清潔感をそのまま体現したような部屋。そして妾の寝かされているその場所も、真っ白なベッド。
ここは、見まごうことなく病院そのモノだった。
「あ、呉葉ちん!?」
そこへ、ディアが部屋に入ってくる。表情に、喜色と不安を滲ませながら。
同時に、妾ははっと我に返る。
「夜貴は!? 夜貴はどうしたディア!?」
「っ、呉葉ちん――まずは、まずは落ち着いてくれ」
「――っ」
ディアの制止に、妾は必至に心を落ち着けようと試みる。いくらなんでも、焦るだけでは状況は知れないことなど分かっている。
けれども――それでも、この心のざわめきを押さえることは困難を極めた。
「――呉葉ちん、落ち着いて聞いてくれ」
「あ、ああ――」
「コーハイは今――」
「…………」
「行方不明でどこへ行ったのかわからない」




