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《第294話》『喪失』
込められた力が、夜貴の周囲を覆っている邪念を吹き飛ばした。
「――――ッッ!!」
「お前の心配ももっともだ。妾自身、迂闊なところが多いことを自覚している」
もう一度、夜貴の身体を抱きしめる。
「馬鹿で、愚かで、マヌケでどうしようもない。それが妾だ。だから、お前の不安を煽ってしまう。だが、それはお互いさまだ」
「ウ、ウ、ウ――」
「そう、お互いさまなのだ。夜貴、お前も馬鹿で、愚かで、マヌケでどうしようもない。妾に、心配ばかりかける」
「ウ、ウギ、ヴ――」
「だが、だからこそ――今まで二人一緒にいたのではないか!」
抱きしめる。ただ、抱きしめる。
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しかし、何も変わらない。
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何も、
いったい、どうすれば元に戻してやれるのか。妾は、そんな想いの中へと、意識を深く、深く沈めてゆく――……、




