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《第293話》『交差』
「夜貴! 己をしっかり持て! 夜貴ッ!」
「ハナサナイ、ボク、ガ、マモ、ル――ッ」
「っ、話を――ッ、」
「聞けェッッッ!!!」
「――ッッ!?!?」
妾は力づくで拘束を破ると、すぐ後ろを振り返った。しかし、飛び上がってそれは視線から外れてしまう。
「シャア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛――――ッッッッ!!!!」
「くっ――!」
もはや闇に包まれ姿さえ見えなくなった夜貴が、獣のような金きり声と共に無数の腕を伸ばしてくる。
「何度やっても無駄だ!」
妖力で作り上げた炎の球を、自身の周りに展開。威力を整えたモノから順次放ち、腕を粉砕してゆく。
「何が離さない、だ! 何が守る、だ!」
破壊した実態を持たぬ腕達のその向こうにいる夜貴へと向かう。
「わざわざそんなことを口に出さずとも――」
そうしながら。
大きく息を吸い込んで。妖力を込め。ありったけの想いを込め。
「我らはいつも一心同体ではないかッッッ!!!」




