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《第289話》『すれ違い宇宙』
「呉葉っ!」
「のわっ!? なぜ余がここに居ることが分かったのじゃ!?」
「夜貴っ!」
「んひゃっ!? いきなり入ってきて何なのよアンタ!?」
「呉葉っ!」
「どどっ、どうしたんだべっ!?」
「夜貴っ!」
「どうなされた呉葉様!?」
藤原 鳴狐や静波多 藍妃、ふうりや零坐、それだけでなく、彼らの、彼らを知る人物全員が、その日二人に会ったと言う。
しかし、そのどちらにも同時に会ったと言う者は誰もいなかった。少し遅れて、あるいは全く違うタイミングで。それぞれ別々に、大声でつがいの名前を呼びながら現れたのだ。
どれだけそれぞれがヒトに会おうとも、一度離れてしまった互いが巡り合うことはなかなかない。
まるで、何か見えない力が、二人の仲を裂こうとしているかのように。
だが――、
「――っ、呉葉!」
「っ、夜貴ッ!」
ついに、その日が終わる数分前。二人はようやく、この日初めて顔を合わせることとなった。
まるで、その時が来るまで時が置かれていたかのように。




