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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第一章
29/1022

《第二十八話》『心は言葉にしなけりゃわからない』

「――フン、何をしに来たというんだ?」


 こちらを振り向きもしない呉葉に、僕は思わず怯んでしまう。

僕にとって、今の彼女の態度は出会った当初の威圧などよりもよっぽど怖い。なぜなら、呉葉が僕から興味を失うということは、すなわち手を離れていくことを意味するから。


「何をって、連れ戻しに来たに決まってるじゃないか」

「ご立派な職業意識だな」

「っ、別に僕は義務感なんかで――」

「はん、どうだか。お前の見ているモノはいつだって『人間』だ。それも、特定の個人などではなく、一つの概念として、だ」


 呉葉の言うそれは、「平和維持継続室」が見ているモノそのモノだった。平たく言えば、「人間」を中心に考え、その「人間」は数値で見る、というモノ。分かりやすい損得勘定だ。

 ――彼女にそう言わせるほど、僕は失望させてしまったのだろうか?

 一つ分かることは、たとえ僕が何を言ったところで、今の呉葉は一切聞き入れてはくれないだろうということだ。


「――となり、座ってもいい?」

「…………」

「座るよ」


 特に拒絶されなかったので、僕は呉葉の隣に腰かけた。それすら拒否されたら、本気でどうしようもなかった。

 ――全く信用を失ったわけでもない、らしい。


「…………」

「…………」

「…………」

「え、えーっと――」


 だが、気不味い。僕らの間に、これまで流れたことのないほどの重苦しい空気が――、


「――――――――――――――――――――――――――ただ、寂しかっただけなのだ」

「呉葉――」


 街を覆う空は、オレンジ色に染まっていた。


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