《第284話》『一度繋がれた強い絆は容易く壊れなどしない。壊れるときは度重なって打ち据えられたときである』
『居なくなった? ――まあ、心配することないんじゃないか?』
ディア先輩に電話をかけると、彼女からは何ともお気楽な返答が帰ってきた。
「た、確かにいつもならそんな事思わないんですけど――その、書置きされてると……」
『いつもと違うことが不安を煽る、そう言いたいのかい?』
僕は電話の向こうの相手だと言うのに思わず頷いた。
実際、呉葉は突然どこかへ行ってしまうことが時々ある。しかし、「わざわざ」書いてその旨を伝えてきたのは初めてで、しかも、それが「探さないで」と言ったモノならばなおさらだ。
ちなみに、今は呉葉が書き置きに記した「実家」に居る。あの、狂鬼姫が根城にしていたと言う屋敷だ。――だが、荒らされ放題で無人のそこに、誰の気配も感じれられない。
――ちなみに、電源を切っているのか、呉葉の携帯にはつながらない。それがなおさら僕の不安をかきたてる。充電忘れてたりしないよね……? たびたびあるから、困ることが稀に。それならばまだ、よいのだけれど。
「僕、呉葉に愛想つかされちゃったのかな――何か、嫌われること、したのかな……」
『あー……コーハイ、こっちは崩れた事務所の片付けで忙しいから、惚気なら切ってもいいかい?』
「惚気じゃないですよ!? こっちはすごくいろいろ心配して――と言うか、崩れたって、何かあったんですか?」
「そいつは――まあ、あー、大したことじゃないさ」
「建物が崩れて大したことないってどう言うことです!?」
「アンタは気にしなくていいよ、休みだろ! あー、そ、そうだな、呉葉ちんが心配なら、一つアンタに言っておくよ」
「――? なんですか?」
「呉葉ちんはいっつも、アンタのことを想ってるってことさ」




