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《第282話》『妖怪の史の一ページ』
その戦いは、三日三晩続いた。
当初は都の中で繰り広げられていた強力な妖怪同士のぶつかり合いは、次第にその場所を外れへと移していき、いつしか誰もいない山の上で炎が舞い踊る。
「シナ、ナ、イ――?」
「ハァ、ハァ――ッ、ハァ……! こ、この程度で、余が死ぬものか――っ!」
互いに満身創痍。だが、それでもなお相手へと向ける気迫を衰えさせる様子はない。
「ユルサナ、イ、ユルサ、ナイ――ッ」
「…………」
先ほどから、同じ言葉を、憎悪を吐き続けるだけの腐れ縁少女の姿に、鳴狐は鼻から息を吹く。
「――そうじゃな。人間は確かに許せぬ。余の母を難癖付けて殺した人間は」
「ウウッ、ウッ、シネッ、ミンナ、ミンナシンデッ、シマェエッ!」
まさに鬼の形相を浮かべて飛び掛かる呉葉を、剣で鳴狐は受け止める。
「しかしだ、貴様は人間であって妖怪ではないのじゃ」
「ギ、ギギッ、ギッ」
「故に、同族殺しに身をやつしてどうすると言うのじゃ――ッ」




