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《第273話》『パンケーキを食べに来たに決まっているだろう! ――冗談だ』
「何をしに来た貴様ァ! と言うか勝手に食うでないわァ!」
「何をって、様子を見に来てやったに決まっているだろう」
そもそもの騒ぎの元凶は、妾の文句を無視して実にうまそうにパンケーキを食べている。
こいつが居なければ、あの時の騒動になることは無く、また、妾が出てくることもなく。夜貴があの一面を覗かせるきっかけに等ならなかったものを。
「今、『貴様は何がしたいんだ』、とでも思っているような顔だな」
「実際思っている! 貴様のせいで、何もかもが滅茶苦茶になりかけた! しかも特に用事もなく、場を引っ掻き回しに来ただけ! これが怒らずにおれまいか! 貴様は危うく、本物の爆弾を起爆しかけたのだぞ!」
「爆弾、か」
狂鬼姫はフォークを置き、妾の前まで歩いてくる。その顔に茶化すような色は無く、むしろ、これ以上ないほど神妙な――、
「あいつ、鬼になりかけている」
「――例のイオナズンのヤツのことだろう?」
「なぜそこでそいつが出てくる。――夜貴が、だ」
「――何?」




