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《第271話》『全てを覆い隠す闇の衣』
「っ、かくなる上は――ッ」
強硬手段に出る他ないと感じた妾は、周囲を妖力の渦で包み込んだ。この力の直撃を受けさせるのは――!
「呉葉、何を――!?」
「な、これは、いったい何ですか!?」
黒き闇の流れへと、夜貴と新人を飲みこむ。おそらく二人は、今頃その意識を底へと沈められているはずだ。
「…………」
渦巻く闇が晴れ、夜貴と新人は地面に倒れ伏す――、
「く、呉葉ちん――?」
「心配ない。ただ大袈裟に気を失わせただけだ」
ただ、と――自分の愛する男の安らかな寝顔を見て思う。そして、突如変貌した、いや、こいつにとっては少なくとも最近から急激に変わったわけではないのだろう、と言う予測を巡らせながら、思い悩む。
「――一体、どうしたらいいのやら」




